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Ⅰ 本稿の目的

近年、グーグル・マップなどの口コミサイトへの投稿について、サイトの管理者に対してその削除を求める裁判が増えている。ほとんどの場合、削除の請求は退けられており、とくに高裁レベルでは、筆者の収集しえた裁判例はすべて請求を退けている。その判断には十分合理的な理由づけがされており、この結論自体に対して強い異論はみられない。¶001

ところが、その理論構成をみると、下級審裁判所が用いる法律構成が分かれており、大きく2つの流れが生じている。すなわち、これらの裁判では人格権侵害を理由に削除請求がされるが、名誉権侵害を請求原因とする事案で、確立した最高裁判例の枠組で判断するものがある一方、既存の判例の判断枠組における「社会的評価の低下」の判断に、受忍限度の概念を援用する裁判例も多い。すなわち、社会的評価が多少低下していても、受忍限度を超えなければ違法とはならない、という判断をおこなうものである。¶002