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Ⅰ はじめに
現在、または、少なくとも2000年代初めまで日本の違憲審査制が活性化していないとする一般的な評価1)が定着している中、近年の(最高裁に限られない)憲法判例の特徴の1つとして、家族や婚姻に関する事件における裁判所の積極的な憲法判断の増加が指摘できよう2)。事実、ここ10年間の最高裁が下した違憲判断の半分はそれらについてであり、また、下級審においても――いずれ最高裁による判断が下されるであろう――同性婚禁止違憲判決3)が下されたことに加え、違憲判決ではないものの、夫婦同氏をめぐる事件は第二次訴訟4)まで発展し、とりわけ、第一次訴訟5)では、再婚禁止期間一部違憲判決6)とともに憲法24条の解釈が初めて最高裁によって示されるなど、裁判所による憲法判例の‘創造性’が顕著である。他方で、合憲、違憲判断にかかわらず、裁判所の立法裁量論への過度な傾倒など‘硬直性’もまた大きな課題として浮かび上がる。そこで本稿では、上記事件で裁判所が展開した、立法事実の変遷に着目する法理と裁判所による24条解釈の妥当性に焦点をあてながら、憲法判例の創造性と硬直性の問題について検討する7)。¶001