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Ⅰ 本稿の目的

最高裁令和4年5月25日大法廷判決(裁判所Web〔令和2年(行ツ)第255号ほか〕。以下「本判決」)の事実の概要は次のとおりである。最高裁判所裁判官国民審査法(以下「国民審査法」)は、在外国民に対し、国民審査に係る審査権の行使を認めていなかった。在外国民であるXらは、Y(国)に対し、主位的に、次回の国民審査において審査権を行使することができる地位にあることの確認を求め(以下この請求に係る訴えを「本件地位確認の訴え」)、予備的に、YがXらに国外に住所を有することをもって次回の国民審査において審査権の行使をさせないことが憲法15条1項、79条2項・3項等に違反して違法であることの確認を求めた(以下この請求に係る訴えを「本件違法確認の訴え」)。また、Xらは、国会において在外審査制度を創設する立法措置が執られなかったこと(以下「本件立法不作為」)により、平成29年10月22日に施行された国民審査において審査権を行使できず精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法(以下「国賠法」)1条1項に基づく損害賠償を求めた。なお、Xらのうち帰国した者は本件地位確認の訴えと本件違法確認の訴えを取り下げた。¶001