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エミール・ファッケンハイム(Emil Fackenheim, 1916-2003)は、ナチスの勃興するドイツを逃れ、トロント大学教授を長く務めたユダヤ系神学者である。彼の論稿に「現代で可能な偶像崇拝Idolatry as a Modern Possibility」がある。¶001

彼によると「偶像idol」には、崇拝する人々の願いや悩みが投影される。偶像は、投影された願いや悩みに応じて行動するものとして理解され、意味づけられる。「……様のお導きだ」という風に。テレビやネットに登場するアイドルも同じである。自分たちの熱い「推し」や思いに応えてアイドルは歌ったり踊ったりしているのだとファンは思い込む。人々の願いや思いが投影されるからこそ、偶像は崇拝される。偶像を崇拝し、応援する人々が崇拝し、応援しているのは、つまるところは自分自身である。¶002