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事実の概要

A社は源泉所得税等497万余円を滞納したため、X(国―原告・控訴人・上告人)は昭和33年9月4日、AのY銀行(被告・被控訴人・被上告人)に対する651万余円の定期預金債権等を差し押さえ、Yに対し、被差押債権中、前記滞納税相当額の支払を求めて本訴を提起した。Aに対し貸金債権610万余円を有していたYは、Aとの相殺予約(Aまたは保証人につき差押等の申立てがある場合には、債務全額につき弁済期が到来したものとし、Aまたは保証人のYに対する預金その他の債権と弁済期の到否にかかわらず、任意に相殺されても異議がない旨の本件特約)に基づき、昭和35年3月21日、YのAに対する貸金債権を自働債権、AのYに対する前記預金債権等を受働債権として相殺する旨の意思表示をした。原審(福岡高判昭和38・11・13高民集16巻8号684頁)は、差押当時自働債権の弁済期が未到来で、受働債権のそれよりも後に到来する場合には、自働債権者は受働債権をその弁済期到来とともに即時弁済すべき立場にあるから、かかる自働債権を差押後に取得した債権と解して、民法511条を類推して相殺を許さないが、Xは差押えと同時にYの貸金債権を自働債権、本件預金債権等を受働債権とする相殺をなしうる旨の本件特約を了知して差し押さえたと認められるとして、本件特約による相殺の抗弁を認めた。Xは、この相殺を認めることは、法が総債権者間の公平を念慮して定めた優先弁済の秩序に反し、法の定めない一種の公示性なき排他的担保権の設定を認容するにも均しいから、この相殺は認められないとして上告した。¶001