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事実の概要
X(国―原告・控訴人・上告人)は、A会社の国税債務の滞納処分として、昭和33年9月4日、A会社がY銀行(被告・被控訴人・被上告人)に対して有していた預金債権等7口の合計651万円余を差し押さえ、Y銀行に対してその支払を求めた。これに対して、Y銀行は、9月4日時点で、A会社に対して貸金債権8口合計610万円余を有していたところ、Y銀行とA会社との間の継続的取引約定書によれば、A会社につき差押えの申請があったときはA会社のY銀行に対する債務全額につき弁済期が到来し、Y銀行はA会社に対して負っている債務について期限の利益を放棄する旨が特約されており(相殺予約)、Xが上記預金債権等を差し押さえた時点で、A会社の預金債権等とY銀行の貸付債権は特約に基づいて弁済期が到来することとなるため、昭和35年3月21日、本件第1審の口頭弁論でY銀行は相殺の意思表示をして、被差押債権はその限度で消滅した旨を抗弁した。原審は、銀行取引での相殺予約の利用が慣行として定着しており、Xもそのことを了知して差し押さえたとして、特約に基づくY銀行の相殺の抗弁を認めた。そこでXは、相殺予約の第三者に対する効力を認めることは私人に差押えを潜脱することを認めることになるとして上告した。¶001