FONT SIZE
S 文字の大きさを変更できます
M 文字の大きさを変更できます
L 文字の大きさを変更できます

 事実の概要 

本件は、静岡県警察所属のA警部補が2012年3月に自殺したことにつき、同警部補の父母であるXら(原告・被控訴人・上告人)が、本件自殺は過重な業務に従事したことにより発症したうつ病等の精神疾患の影響によって行われたものであり、同警部補の職務を管理監督すべき上司らは安全配慮義務に違反したと主張して、上司らが属するY(静岡県─被告・控訴人・被上告人)に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という)1条1項に基づく損害賠償を求めた労災民訴事件である。同警部補は、うつ病エピソードを含む精神疾患の発症1か月前の期間、通常の当直業務や交番長としての職務に加え、連続窃盗事件の捜査、実習生の指導業務、異動のための引継作業、そして海外研修の事前準備の業務に従事し、時間外労働時間は110時間を超えていた。また同警部補が2011年12月に受けたストレス診断では最低ランクの結果が示され、同警部補はこれを上司らに伝えていたが、特に具体的な是正措置がとられることはなかった。第1審(広島地福山支判令和4・7・13民集79巻3号〔参〕1192頁)は公務上の災害の認定に関し地方公務員災害補償基金理事長が同基金各支部長宛てに発出した通知「精神疾患等の公務災害の認定について」(平成24・3・16地基補61号。以下「認定基準」という)をしん酌し、慰謝料等一部請求を認容したが、原審(広島高判令和5・2・15前掲民集〔参〕1254頁)は上記認定基準を形式的に適用することで請求を棄却したため、Xらが上告受理申立てをした。なお、同警部補の妻子がYに対してした、安全配慮義務違反に基づく別件の損害賠償請求について、1審・控訴審はともに原告の請求を認容し、同控訴審判決に対するYの上告に対しても最高裁は本判決と同日に上告を棄却した(労判1341号71頁)。¶001