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事実の概要

酒税法は、酒類製造者に納税の義務を課し(6条)、酒類を製造しようとする者は税務署長の免許を受けなければならず(7条1項)、違反者には刑罰が科せられる(54条)と規定する。そして免許は、年間製造見込量が、例えば清酒なら60キロリットル、雑酒なら6キロリットルに達しなければ付与されず(7条2項)、自己消費目的の酒類製造は、事実上禁止されている状態である。¶001

本件被告人は、戦前からの社会運動家であり、戦後は福岡県内の村長を務め、またいわゆる「成田闘争」に深く関与し、その間農業、文筆業にも従事していた。その中で、生活に必要な物は自分で生産する自由がなければならぬ、という思想を抱き、無免許のまま清酒および雑酒(どぶろく)を公然と製造し(利き酒会には国税庁長官にも招待状を送っている)、起訴された。¶002