事実の概要
従前、住民基本台帳(以下「台帳」という)の情報はこれを保有する当該市町村においてのみ利用されていたが、住民基本台帳法改正(平成11年)は、氏名・生年月日・性別・住所の4情報に、住民票コード(無作為に作成された10桁の数字および1桁の検査数字を組み合わせた数列)および転入・出生等の変更情報を加えた本人確認情報を、市町村・都道府県・国の機関等で共有してその確認ができるネットワークシステム(以下「住基ネット」という)を構築した。Xら(原告・控訴人・被上告人)は、この住基ネットにより憲法13条の保障するプライバシー権その他の人格権が違法に侵害されたなどと主張して、台帳を保管するY(守口市―被告・被控訴人・上告人)に対し、国賠法1条に基づく損害賠償(慰謝料)とともに、上記権利に基づく妨害排除請求として住民票コードの削除を求めた。Xらの請求を棄却した1審に対し、2審は、「自己のプライバシー情報の取扱いについて自己決定する利益(自己情報コントロール権)」を憲法上保障されているプライバシー権の重要な一内容とし、本人確認情報をこの対象に含めた上、その収集・保有・利用等には、①正当な行政目的と、②その実現手段の合理性が求められるところ、行政機関に保有されている個人情報が住民票コードをもってデータマッチングや名寄せされて利用される具体的危険のある住基ネットは②の合理性を欠くとして上記権利の侵害を肯定し、住民票コードの削除請求を認容した。そこでYが上告した。¶001