事実の概要
X(原告・被控訴人=附帯控訴人・被上告人)は、昭和21年1月よりA会社に雇用され工場従業員として勤務していた女性である。A会社は昭和25年7月にXが勤務する工場を含めB会社に営業譲渡が行われ、さらに、B会社は昭和41年8月にY会社(被告・控訴人=附帯被控訴人・上告人)に吸収合併された。B会社の定年年齢は男女ともに55歳であったが、Y会社の就業規則には「従業員は、男子満55歳、女子満50歳をもって定年として、男子は満55歳、女子は満50歳に達した月の末日をもって退職させる」との定めがあった。B会社からY会社への吸収合併の際、B会社の従業員の4分の3以上を占める労働組合は労働条件を原則としてY会社の就業規則によるとの労働協約をB会社と締結したために、当時非組合員であったXにもその一般的効力が及ぼされることになった。そのために、昭和44年1月に満50歳に達するXに対して、Y会社は昭和43年12月に翌年1月末日をもって退職を命ずる旨の予告を行った(就業規則には「定年退職に該当するときは30日前に予告する」との定めもあった)。これに対し、Xは地位保全の仮処分申請を行ったが、裁判所は、Y会社の男女別定年制の合理性を認めて当該申請を退けた(東京地判昭和46・4・8判時644号92頁、東京高判昭和48・3・12判時698号31頁)。ところが、本件の雇用関係存続確認等の請求事件では、第1審(東京地判昭和48・3・23判時698号36頁)および原審である第2審(東京高判昭和54・3・12判時918号24頁)ともに、男女別定年制を民法90条の公序良俗違反で無効と判断した。Y会社は、原審判決後、男女ともに定年年齢を60歳にしたが、原審の判断は憲法14条および民法90条の解釈を誤ったものとして上告した。¶001