事実の概要
生活保護法(以下「法」という)8条の委任を受けて厚生労働大臣が定める保護基準(昭和38年厚生省告示158号)は、70歳以上の者の特別な需要を充足する目的で、生活扶助(日常生活費。法12条)の支給額を加算する老齢加算を設けていた。だが平成15年、財務省・政府は老齢加算の見直しの必要を指摘し、厚生労働省に設置された専門委員会は、統計資料等に基づき(70歳以上の者の方が60~69歳の者よりも生活扶助に相当する消費支出額が少なく、70歳以上の単身者の生活扶助費〔老齢加算を除く〕は70歳以上の低所得単身無職者の生活扶助相当消費支出額よりも多い等)、ア:加算に見合う特別な需要が認められないため現行の老齢加算は廃止、イ:ただし高齢者の社会生活に必要な費用に配慮し保護基準体系の継続的検討、ウ:激変緩和措置の採用、を意見する中間取りまとめを公表した。これを受け厚生労働大臣は、平成16年度から3年間かけて保護基準を改定し、老齢加算を段階的に減額・廃止した(以下「本件改定」という)。Xら(原告・控訴人・上告人)は、本件改定に基づき生活扶助の支給額を約2割減額する旨の保護変更決定を受け、この決定の取消しを求めて出訴し、本件改定の違憲・違法(憲25条1項、法3条・8条・9条・56条違反等)を主張した。第1審(東京地判平成20・6・26民集66巻3号〔参〕1632頁)・原審(東京高判平成22・5・27同民集〔参〕1685頁)は本件改定を合憲・適法とし、Xらが上告・上告受理申立てを行った。¶001