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事実の概要

特別抗告人Xは、昭和28(1953)年2月5日、覚せい剤取締法(現・覚醒剤取締法)違反容疑の事実Aで逮捕され、勾留状の執行を受けたが不起訴となり、同月26日に釈放された。ところが、検察官は事実Aに基づく勾留中に別の同法違反容疑の事実Bの取調べを行っており、Xは事実Bと、その後に発覚した同法違反容疑の事実Cによって起訴され、金沢簡易裁判所は事実Bについては無罪、事実Cについては有罪の判決を下し、確定した。そこでXは、無罪となった事実Bの公訴事実は不起訴処分となった事実Aに基づく勾留中に取り調べた事実に基づき起訴したものであるから、たとえ事実Aについて不起訴処分になったとはいえ、当該勾留に対する刑事補償をなすべきであるとして、刑事補償を請求した。金沢簡裁は、本件が「併合罪中の一部につき無罪、他の一部につき有罪の裁判があった」場合にあたり、この場合に「補償の一部又は全部をする、しないかは、当裁判所の裁量による」としつつ、「覚せい剤取締法違反被告事件の重大性に鑑み本件につき、請求人の請求を棄却するを相当」とする決定をした(金沢簡決昭和29・12・27刑集10巻12号〔参〕1697頁)。¶001