事実の概要
昭和24年4月6日午前8時頃、巡査A、Bは、同年3月27日、29日にY(被告人)が他人の所有する棕梠(しゅろ)の皮を盗んだところを見たというCの知らせにより、旧森林法83条の森林窃盗罪(3年以下の懲役または1000円以下の罰金)の容疑でY宅を訪れ、Yに任意同行を求めた。Yは病気と称してこれに応じず、Aが再度任意同行を求めたところ、「行けないから行けぬ」と叫ぶので、Aは証拠隠滅、逃亡のおそれがあると思い、「任意出頭してくれなければ緊急逮捕する」と告げ、Yが裏口から逃亡するのを防ぐため表に出た。すると女性が表戸を閉めたので、Aは「何故閉めるのか開けろ」と言ったがこれに応答はなかった。それから5分くらいして表戸が開き、Yが棒をもって出てきて、「逮捕するならしてみよ」と言いながらAに殴りかかった。Yと両巡査の組み打ちとなったが、結局Yは組み伏せられ、手錠をかけられた。この間、Bは加療2週間を要する傷害を受けた。なお、同日中に逮捕状が発せられている。Yは森林窃盗罪、公務執行妨害罪、傷害罪により起訴された。第1審(徳島地脇町支判昭和24・6・23刑集9巻13号〔参〕2768頁)は懲役10か月の有罪とした。Yは控訴し、緊急逮捕は憲法33条に違反すると主張したが、第2審(高松高判昭和26・7・30同刑集〔参〕2769頁)も控訴を棄却したため、Yは上告した。¶001