事実の概要
機械類の陸上運送を業とするY(被告・控訴人・被上告人)は、荷送人たる訴外Aと外国製研磨機(価額500万円)のトラックによる運送契約を締結した。この運送中に運転手の過失による事故のため研磨機は大破し、価額が83万5000円に下落したため、416万5000円の損害が生じた。¶001
ところで、Yでは、事故の場合の賠償能力に欠けることから、運送の引受けにあたって、特に遠隔地への運送の場合にはそのすべてについて、荷主の申告価額を保険価額および保険金額として保険会社である訴外Bと損害保険契約を締結することの承諾を荷主から得た上で、Yが保険契約者となり、荷主を保険金受取人とする損害保険契約を締結していた。ここでは、運送中の事故による損害を当該保険金によって塡補し、Yは荷主に対して賠償責任を負担しないことを約定していた。本件でも、Aの申告により研磨機の価額を400万円として、これを保険価額および保険金額とする損害保険契約が締結されており、本件事故について、BよりAに対して、割合によって計算された保険金333万2000円が支払われた。一方、Aは、本件の運送事故から生じる損害を塡補するため、一部保険として保険金額100万円の運送保険契約を保険会社であるX(原告・被控訴人・上告人)と結んでいたところ、本件事故が生じたため、XはAに対して、割合により算出された83万3000円の保険金を支払った。¶002