事実の概要
Xら(原告)は、株式会社Y1によって昭和60年12月に開業された有料老人ホーム(以下、本件ホームという)の入居者であり(契約者12名、同居者5名)、昭和61年3月下旬から12月にかけて設置者Y1と入居契約を締結した。本件ホームは、入居者が、入居金・権利金など最大で約3000万円近い一時金を入居時に支払い、管理費・食費等を定期的に支払う終身利用型の有料老人ホームであるが、入居金は入居15年未満の退去時にはその65%、15年経過後の退去時には全額返還されることとなっていた。本件ホームは、居室数258室、定員413名という大規模なものであったが、入居契約は17室23名(全体の約6%)について締結されたにとどまった。当初から経営は不安定なものとなり、昭和63年以降は募集活動が中止され、平成元年にはY1の債務を肩代わりした株式会社Aに、本件ホームの建物の一部(居室の6割強)について所有権移転(区分登記)がなされた。そのため、Xらは本件ホームの存続や入居金の返還について多大な不安を感じ、Y1所有の建物について処分禁止の仮処分を申し立て、決定を受けた。Y1とXらの話合いの結果、Y1はXらに入居金等一時金を返還し、仮処分手続費用の補償として1人60万円の支払を行った。その後、Y1からXらに入居室料(1か月12万5000円ないし19万8000円)の請求と管理費値上げの通知、送迎バス廃止の申入れがあり、協議はまとまらず、平成2年夏頃、Xらは入居契約を解除・退去し、Y1は老人ホーム経営から撤退し倒産を免れた。¶001