事実の概要
原審神戸家庭裁判所は、抗告人である少年が、犯罪者予防更生法34条2項に規定する一般遵守事項、ならびに同法31条3項に基づき近畿地方更生保護委員会の定めた特別遵守事項等に違反する所為に及んだとして、少年を中等少年院に収容(戻し収容)する旨の決定をした。これに対し少年が抗告をしたものである。¶001
決定要旨
抗告棄却。¶002
「犯罪者予防更生法(第44条第45条第49条ないし第51条)によれば仮出獄の取消決定に対しては不服の申立が許されており、このことに鑑みると、これと類似する戻収容の決定も亦それ自体本質上不服申立になじまないものではないと考えられる。尤も戻収容はその決定にあたり収容期間を23歳又或る者については26歳まで延長し得る、(同法第43条)点において、仮出獄の場合とは異り単に執行を復元するに過ぎない性質のものとはいえないが、それ故にこそなお更然りである。ところで戻収容の決定が同法による不服申立の対象にされていないのは前者の決定が地方更生保護委員会の処分であるのに対し、本決定は延長収容の処分をも許すためと少年保護の特質上特に慎重を期するという見地から同法第43条を以て、これを裁判所の措置に委ね、これらに関する手続は次に述べるとおり少年法及び少年審判規則等の規定に譲ることにした当然の結果によるものと思われる。しこうして少年法第36条に基く少年審判規則によると、その第55条に犯罪者予防更生法第43条の規定による戻収容申請事件等の手続はその性質に反しない限り、少年の保護事件の例による旨規定せられているのであって、『少年の保護事件の例による』とは、少年の保護事件について設けられている諸手続即ち少年法第2章並びにこれに基く少年審判規則の各規定によるものとした趣旨であると解せられる。そこで右規定のうち少年法第2章第3節に定められている抗告について、これを右戻収容申請事件の戻収容の決定に準用することが、その性質に反するか否かについて按ずるに、少年の保護事件の抗告に関する少年法第32条の規定を見ると、抗告は保護処分の決定(同法第24条第1項)に対して許されることに定められており、戻収容の決定は右いずれの保護処分の決定にも該当しないことが明らかであるけれども、右抗告の対象となっている右条項第3号の少年院送致決定と右戻収容の決定とを対比するときは、たとえ後者の主たる機能がいわば仮退院の措置の取消で、さきになされた保護処分の決定たる少年院送致決定の執行の復元と目し得るとしても右両者の各決定は、それによりいずれも少年を少年院に拘束するものであって、互に相反するものではなく、むしろ実質的には同種のものと考えられる。それ故叙上の点を考え合わせると戻収容の決定に前記抗告の規定を準用しても、何らその性質に反するものとは思われない。¶003