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事実の概要

(1) 資生堂東京販売事件(以下「①事件」という)

X1(富士喜本店―原告・被控訴人・上告人)は、化粧品の小売業等を営む会社であり、Y1(資生堂東京販売―被告・控訴人・被上告人)は、資生堂が製造する化粧品の販売会社である。Y1は、特約店契約に基づき、約28年にわたって継続的に、化粧品をX1に供給していた。ところが、Y1は、同社がX1に課していた対面販売義務(化粧品の販売時に、対面で顧客に使用方法等を説明したり、顧客の相談に応じたりする義務)を遵守せずにX1が資生堂化粧品を販売した(通信販売と職域販売をした)ことを理由に、X1との契約を解除した。X1は、Y1に注文した化粧品の引渡しを受けるべき地位にあることの確認等を求めて提訴した。1審判決は、対面販売の義務付け等は、価格維持を図るもので独占禁止法(以下「法」という)の法意にもとる可能性があることなどを理由として、継続的供給契約を解除すべきやむを得ない事由は認められず、Y1による契約解除は許されないと判示し、Y1に対して、注文を受けた化粧品のX1への引渡しを命じた(東京地判平成5・9・27判時1474号25頁)。しかし、控訴審では、原判決が取り消され、X1の請求が棄却された(東京高判平成6・9・14判時1507号43頁)。X1は上告し、その審理において、対面販売義務が旧一般指定(昭和57年)13項(現行法では一般指定12項)の拘束条件付取引に当たるか否かが争点の一つとなった。¶001