本件は、弁護士Aが、身体拘束下にある被疑者との検察庁舎内での接見を申し出たのに対し、検察官が、庁舎内には接見のための設備がないなどとして拒否したことを違法として、国に慰謝料を請求した事案である。
最高裁は、Aの請求を棄却する判断の理由中で、次のように判示した。
「検察庁の庁舎内において、弁護人等と被疑者との立会人なしの接見を認めても、被疑者の逃亡や罪証の隠滅を防止することができ、戒護上の支障が生じないような設備のある部屋等が存在しない場合には、〔接見〕の申出を拒否したとしても、これを違法ということはできない。〔その部屋等とは、接見専用の設備のあるものには限られないが〕その本来の用途、設備内容等からみて、接見の申出を受けた検察官が、その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ、また、その部屋等を接見のために用いても、被疑者の逃亡、罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの問題が生じないことを容易に判断し得るような部屋等でなければならない」。もっとも、「〔設備の不存在を理由に接見を拒否した場合も〕弁護人等がなお検察庁の庁舎内における即時の接見を求め、〔その〕必要性が認められる場合には、検察官は、例えば立会人の居る部屋での短時間の『接見』などのように、いわゆる秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の『接見』(以下、便宜「面会接見」という。)であってもよいかどうかという点につき、弁護人等の意向を確かめ、弁護人等がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある」。