事実の概要
(1)
本件は覚醒剤の自己使用に問われた事案で、尿の鑑定書の証拠能力が争われた。¶001
(2)
奈良県生駒警察署の警察官3名は、被告人が覚醒剤を使用しているとの情報を得たため、午前9時30分頃、私服で被告人宅に赴き、門扉を開けて玄関先に行き、「○○さん、警察の者です」と呼びかけ、引戸を半開きにして「生駒署の者ですが、一寸尋ねたいことがあるので、上ってもよろしいか」と声をかけ、それに対し被告人の明確な承諾があったとは認められないまま、奥八畳間に入った。ベッドで目を閉じて横になっていた被告人の枕許に立ち、「○○さん」と声をかけて左肩を軽く叩くと、被告人が目を開けたので、同行を求めたところ、金融屋の取立てだろうと認識したと窺える被告人は「わしも大阪に行く用事があるから一緒に行こう」と言った。着替えて玄関に出てきた被告人を警察用自動車(ライトバン)の後部座席に乗車させ、午前9時40分頃被告人宅を出発し、午前9時50分頃生駒警察署に着いた。被告人は車中で警察官ではないかと考えたが、反抗することはなかった。午前10時頃から事情聴取を受け、午前11時頃本件覚醒剤使用事実を認め、午前11時30分頃求めに応じて尿を提出した。被告人は、警察署に着いてから前記採尿の前と後の少なくとも2回、警察官に対し、試験を受けることになっている旨申し出たが、同警察官は最初の申し出には返事をせず、後の申し出には「結果が出るまでおったらどうや」と言って応じなかった。午後2時30分頃鑑定結果の回答があり、逮捕状請求手続がとられ、午後5時2分被告人を逮捕した。¶002