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事実の概要

被告人は、火災保険金の詐取を企てて自己の経営する会社の店舗に放火してこれを焼損したうえで、保険会社に火災保険金を請求したとして、非現住建造物等放火罪および詐欺未遂罪で起訴された。放火の犯人性が争点となった公判において、民間の火災原因調査会社の代表者A作成の「燃焼実験報告書」と題する書面が検察官により証拠調べ請求されたが、弁護人が不同意とした。これを受けて検察官は請求を撤回し、同報告書を抄本化したもの(以下、「本件報告書抄本」という)を改めて証拠請求した。本件報告書抄本は、「燃焼実験報告書」の内容のうち、実験結果が見たままに客観的に記載された部分のみが抄本化されたものであり、Aによる専門的分析の記載は残されなかった(三浦透・最判解刑事篇平成20年度611頁参照)。第1審(福岡地裁久留米支部)は、Aの証人尋問ののち、本件報告書抄本を犯人性認定の間接証拠として採用し、被告人を有罪とした。原審(福岡高裁)も、本件報告書抄本に刑訴法321条3項が準用されるとして第1審の判断を是認した。これに対して、被告人が上告した。¶001