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事実の概要

(1)

本判決は、いわゆる「草加事件」として著名な強姦(現在の不同意性交等罪に該当するが、概念・範囲が異なるので当時の罪名を使用する。以下、強制わいせつについても同じ)、殺人事件(以下「本件犯行」という)の民事の損害賠償請求の上告審判決である。昭和60年7月に埼玉県草加市内の残土置き場で女子中学生V(当時15歳)の絞殺死体が発見され、その犯行についてVと面識のあったAないしDを含む少年6名(当時13歳から15歳)の関与が疑われ、このうち、別件のぐ犯で立件されていたD(13歳)は教護院(現在の児童自立支援施設)に送致され、本件犯行に関して保護処分は受けなかったが、他の5名の少年は逮捕され、最終的には6名全員が犯行を自白した。少年審判では全員が否認に転じたが、うちA、BおよびCの3名が強姦、殺人等の非行事実で、Eが強制わいせつ等の非行事実で、Fが強姦等の非行事実でそれぞれ少年院送致の保護処分決定を受け、抗告、再抗告を経て各保護処分決定が確定した(ただし、抗告審で強姦は未遂と認定)。本件は、Vの両親である被上告人が、Vに対する強姦・殺人に関与したとされる少年AないしDの親権者であるYらに対し、監督義務者としての注意義務違反があったと主張し、不法行為に基づく損害賠償請求を提起した事案である。¶001