事実の概要
被請求人は昭和59年6月16日に窃盗未遂の現行犯人として私人に逮捕され、警察署に引致されたが、その際本名を名乗れば前科の関係から実刑になることが必至であると考えられたため、かつて服役中に知り合い、約10年間同居したこともあり、本籍、生年月日、前科、身上関係等も熟知している知人の氏名を冒用して実刑を免れようと考え、逮捕の当初から氏名を詐称して警察官の取調べを受けたが、被請求人の述べる本籍、生年月日のほか、身上および前科関係についての供述内容も被冒用者のものと符合(照会に対する回答に指紋番号の回答もあったが、警察署の取扱い基準に従い、照合しなかった)しており、また住居確認のため、被請求人が居住していると称するアパートへ警察官を案内させ、警察官においてアパートの管理人から事情を聴取したところ、被請求人の供述通り、10年前から同所に居住していることが確認されたため、取調べにあたった警察官らは氏名、身上関係等に何ら不信を抱かなかった。同年6月18日に事件が身柄付きで検察庁に送致され、取調べのうえ、翌19日に被冒用者を被告人として、住居侵入、窃盗未遂事件で簡易裁判所に対して逮捕中求令状起訴がなされた。被請求人は即日勾留され、在監中に起訴状謄本の送達を受け、その後保釈された。同年9月3日の第1回公判期日に被請求人が出廷し、裁判官の人定質問に対して住居を制限住居であると述べたほか、起訴状記載のとおり答えて審理が進められ、即日結審し、同月10日に被請求人が出廷した第2回公判期日において、住居侵入、窃盗未遂の事実につき、懲役10月、執行猶予3年の判決が宣告され、確定した。¶001