FONT SIZE
S
M
L

本件は、公営住宅法にいう事業主体である地方公共団体Xの所有する公営住宅にYがXの使用許可を得て居住していたところ、Xの許可を受けずに建物を無断増築したことから、Xは、増築建物の収去等の催告の後、上記事実は公営住宅法、X住宅条例に規定する明渡請求事由に該当するとして使用許可を取り消し、Yに対し本件住宅の明渡し、無断増築された建物の収去等を求めて出訴した事案である。1審(東京地判昭和54・5・30判時929号19頁)はXの請求を棄却したが、原審(東京高判昭和57・6・28判時1046号7頁)は、無断増築が公営住宅法ならびにX住宅条例所定の明渡請求事由に該当するとしつつも、信頼関係の相手方にふさわしい者を賃借人として選択する自由のない公営住宅の使用関係に信頼関係の法理を持ち込むことは相当ではないとし、Xの請求を認容した。これに対し本判決は、原審と異なり、「公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべき」としたが、本件事案では信頼関係を破壊するとは認め難い特段の事情があるとは認められないとして、結果、Yの上告を棄却したものである。

この記事は有料会員限定記事です
この記事の続きは有料会員になるとお読みいただけます。
有料会員にご登録いただくと
有斐閣Online
ロージャーナルの記事
が読み放題
記事を
お気に入り登録できる
条文や法律用語を
調べられる
会員について →