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本判決は、県の漁業監督吏員が、管轄区域である県の区域の外の海面において行った停船命令がいわゆる「追跡の法理」により適法とされた事例である。

長崎県の漁業取締船Aは、中型機船底曳網漁業取締規則(=漁業法および水産資源保護法に基づく委任命令、昭和38年廃止)に基づき、操業禁止区域侵犯の疑いのあるBなる船舶に立入検査を行うため同船に接近したところ、同船はこれに気づいて全速力で逃走した。Aは、直ちに追跡を開始したが、Bが逃走を開始した地点は、長崎県の管轄漁業取締区域であったものの、A船長で長崎県漁業監督吏員であるCが停船命令を発した場所は、福岡県の管轄漁業取締区域内ないし従来から長崎・福岡両県が競合的に漁業取締りを行ってきた海域であった。これに対してBは停船信号を無視し、直ちに停船しなかったのみならず、ロープを曳いてAの推進機に巻きつかせこれを航行不能に陥らせようとしたため、Bに乗り組んでいたX1・X2(被告人)は、中型機船底曳網漁業取締規則違反、公務執行妨害罪により起訴された。これに対してXらは、Cが停船命令を発したのは、長崎県の管轄漁業取締区域外であり、適法な職務執行に当たらない、と主張した。これに対して第1審(長崎地判言渡年月日等不詳公刊物未登載)、第2審(福岡高判昭和38・10・18判時363号49頁)とも有罪としたため、Xらが上告。

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