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事実の概要

違法、怠慢な機関委任事務の処理に対する職務執行命令訴訟が、機関委任事務時代末期に提起された。まさに地方分権前夜の世間の耳目を集めた事件である。¶001

この事件は、私有地の軍用基地としての使用をめぐる機関委任事務について、沖縄県が事務処理を行わなかったため、国が起こした訴訟である。日本は沖縄復帰に伴い日米安全保障条約6条および日米地位協定2条に基づき駐留軍用地を米国に提供することになっている。ところが、沖縄の駐留米軍用地の一部の土地所有者が、用地の米軍への提供(立会い・署名等)を拒否する事例が続き、政府は過去に3度にわたり、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」(以下「駐留軍用地特措法」という)に基づき、知事が地権者に代わり署名等をすることで、強制的に用地の使用権原を取得してきた。¶002