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事実の概要
奈良県では、ため池の破損による災害を防止するため、昭和29年、「ため池の保全に関する条例」(以下「本条例」という)が制定された。本条例は、「ため池の破損、決かい等に因る災害を未然に防止する」ため(1条)、「ため池の堤とうに竹木若しくは農作物を植え、又は建物その他の工作物(ため池の保全上必要な工作物を除く。)を設置する行為」を禁止し(4条2号)、違反者に罰金刑を定めていた(9条)。¶001
被告人らは、奈良県内にあるため池の堤とうで先祖代々農作物を栽培していたが、本条例制定後も、農作物の栽培を継続したため、本条例違反として罰金刑を科せられた(葛城簡判昭和35・10・4刑集〔参〕17巻5号572頁)。被告人らが控訴したところ、大阪高判昭和36・7・13(判時276号33頁)は、財産権の内容に規制を加えることは法律によらなければならないことや、損失補償の必要性を指摘し、本条例は違憲であるとして無罪判決を言い渡した。これに対して検察官が上告した。¶002