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事実の概要

(1)

X(原告・被控訴人・上告人)と訴外Aは婚約中であり、Aの母Y(被告・控訴人・被上告人)はスナックを所有・経営していた。Yは、X・Aの勧めにより、スナックの改装工事を行った(工事のための交渉等は事実上Aが主に進めた)。工事等には211万円を要したが、それは、Xが、Aとの結婚費用等に充てるため同人に支出を一任し、預託していた現金100万円と銀行預金300万円の中から支出された(後に両名は婚姻し、約5年後に離婚)。Xは、婚姻後は夫婦でスナックを経営することを考え、YもAに経営を譲る旨を述べていた。ところが、その後Yは、家族の入院費用等の問題から、経営を譲ることを渋るようになり、Xとの間に不和を生じ、経営を譲らなかった。そこで、Xが、Yに対し、211万円の支払いを求めて訴えを提起したのが本件である。Xの主張はこうである。①Aは、代理権なくXの代理人としてYに対し211万円を貸し付けたか、Yからスナックの改装費をXが立替払いすることを委託され、預託金等の中から211万円を立て替えて改装工事の請負業者に支払った。XはAの無権代理行為を追認したので、Yに対し211万円の返還を求める(主位的請求)。②仮に、Aが本人としてYと消費貸借または立替契約をしたとすれば、AはXに無断で預託金等を工事代金の支払いに充て費消したのであるから、AはXに対し不法行為に基づく損害賠償債務211万円を負担しているところ、Aは無資力であるから、XはAに代位してAのYに対する貸金または立替金の支払いを求める(予備的請求)。③仮に、①②が認められないとすれば、Yは工事代金のX所持金による支払いにより工事代金債務を免れて同額の利益を得、Xは同額の損失を被ったのであるから、XはYに対し211万円の不当利得の返還を請求する(予備的請求)。¶001