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事実の概要

Y(被告・控訴人・被上告人)の実父である亡Aと事実上の婚姻をしていたX(原告・被控訴人・上告人)は、自らがAから贈与を受け、解体移築した本件家屋を、Yが何らの権限もないのに占拠し、その所有権保存登記もしているとして、本件家屋について所有権確認および所有権保存登記の抹消登記手続を求めて訴えを提起したところ、第1審(和歌山地新宮支判昭和37・10・10民集〔参〕23巻10号1829頁)は、請求を認容した。¶001

これに対して控訴したYは、裁判外でYの代理人B、X、Xの夫Cとが話し合った結果、YがXに22万円を支払うこと、Xは本件家屋についての請求権を放棄し、本訴を取り下げることを内容とする和解(本件合意)が成立したところ、YはXに22万円の支払いをすでに完了しているため、Xは本訴を取り下げるべきである、と主張した。原審(大阪高判昭和44・4・24前掲民集〔参〕1831頁)は、Bの証言に基づき、Yの主張を認め、「Xの本来の請求原因事実について判断するまでもなく……Xは、これ以上本訴を追行する必要ないし利益がなくなったものといわねばなら」ないとしたが、訴訟外の訴え取下げ合意がなされた場合「その訴訟が如何なる主文を以て終結するのが相当であるかにつき、わが民訴法上明文の規定もないので、当裁判所は、それが訴をこれ以上実施する利益、必要のない、客観的要件を欠く場合の一種であるとして、Xの訴を却下するのが相当であると解する」とし、原判決を取り消し、訴えを却下した。¶002