事実の概要
[①事件]
Y(被告・控訴人・上告人)は、製品の製造販売を行うに際し、X(原告・被控訴人・被上告人)との継続的取引契約(内容には争いがある)に基づき、Xが輸入した原材料を購入し、また製品をXに輸出させ手数料を支払う取引を行っていた。昭和54年11月2日、YはXに対し、製品売買代金として1286万8060円の支払い(以下「別訴訴求債権」という)等を求める訴え(以下「別訴」という)を東京地裁に提起し、昭和55年9月22日、XはYに対し、原材料の売買代金等の残額258万1251円(以下「本訴訴求債権」という)の支払いを求める訴え(以下「本訴」という)を東京地裁に提起した。昭和58年2月25日、本訴につき請求を一部認容しYに207万4476円および遅延損害金の支払いを命じる第一審判決(民集〔参〕45巻9号1443頁)がされ、Yが控訴した。同年4月18日、別訴につき請求認容判決(判時1097号61頁)がされ、Xが控訴した。昭和59年4月18日に共に東京高裁に係属した本訴・別訴の控訴審につき弁論を併合する決定がされた。昭和60年3月11日、両事件につき開かれた口頭弁論期日において、Yは、本訴につき別訴訴求債権を自働債権として本訴訴求債権と対当額で相殺する旨の陳述(以下「本件相殺①」という)をした。その後、昭和61年2月17日両事件の弁論を分離する決定がされ、昭和62年6月29日、別個に、本訴・別訴についてともに控訴棄却判決がされた(本訴:前掲民集〔参〕1449頁、別訴:金法1182号41頁〔確定〕)ところ、既に係属中の別訴において訴訟物となっている債権を他の訴訟において自働債権として相殺の抗弁を提出することは民事訴訟法(以下「民訴法」という)231条(現142条)の類推適用により許されない(ため本件相殺①は理由がない)ことを理由とする本訴の控訴審判決に対してYが上告。¶001