事実の概要
Y1(被告・控訴人・被上告人)は、婚姻の届出をしていないA・B間の子として生まれたが、虚偽にC・Dの二男として届けられ、大正4年6月9日にY2(被告・控訴人・被上告人)とその妻の養子となった。当時Y1は15歳未満であったため、戸籍上の父母であるC・Dが、Y1に代わって縁組の承認をした(代諾縁組。民797条1項)。Y1・Y2はそれ以来、実親子同様の生活を営んできた。大正9年Y1が8歳のときにY2は後妻を迎えた。その際に実父母A・Bは、将来Y2に実子ができれば紛争が生じるだろうと心配してY1を離縁するようY2に求めたが、Y2は、これを拒否した。また、昭和18年10月Y1が出征する際には、Y2はその門出を祝し、昭和21年9月28日にY1が婚姻の届出をするときにも、Y2はこれに同意を与え、挙式費用を出した。ところが昭和21年にY1が商売の資金入手の必要に迫られ、Y2に対して財産を要求したことから両者間に不和が生じた。昭和22年12月26日に、Y1はY2に対して書面によりY1・Y2間の無効な養子縁組を追認する旨の意思表示をした。Y2と後妻との間に生まれた実子であるX(原告・被控訴人・上告人)は、大正4年の養子縁組について、実父母ではないC・Dは代諾権を持たないにもかかわらず縁組の承認をしたために縁組は無効であるとしてその無効確認の訴えを提起した。¶001