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事実の概要

X女(原告・被控訴人・被上告人)とY男(被告・控訴人・上告人)は、昭和26年12月11日に結婚式を挙げ、Y方でYの両親や弟と共に暮らし始めたが、婚姻の届出は済ませていなかった。Y一家は家業として運輸業を営んでおり、Xは、Yの母Aの指示の下で早朝から深夜まで働いていたが、Aとの折り合いが悪く、YもAの側に立つため、Y方で孤立しがちであった。昭和27年6月2日夜、Aから小言を受け、Yらからも非難されたことをきっかけに、Xは父Bに迎えを乞い、BとYらとの話合いの結果、しばらく実家で静養することとなった。実家に帰った翌日、Xは発熱し、医師の来診を受けたところ肺結核と診断されたため、Yらと相談の上で、そのまま実家で療養を続けていた(同年7月25日から昭和28年3月までは入院)。その間、YやAが見舞いに来ることもあったが、昭和28年3月21日、Yの兄Cより、Xに対し、Y宅にあるXの荷物を引き取るようにとの内容証明郵便が送達され、X・Yの関係は終了した。そこでXは、内縁関係の一方的破棄により精神的苦痛を受けたとして、Yに対して、慰謝料10万円の支払いを求め、加えて、結核治療のために支出した医療費31万4132円のうち20万円についてはYに分担義務があるとして、合計30万円の支払いを求めた。¶001