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事実の概要

本判決は、炭鉱会社Aらの元従業員またはその相続人であるXら(原告・控訴人・被上告人)を含む多数の原告が、原告またはその被相続人が粉じん作業によりじん肺にり患したとして、Aら6社とY(国―被告・被控訴人・上告人)を訴えた事件の、Yからの上告受理申立てに係る判決である。XらはYに、じん肺防止のための規制権限の不行使(国賠1条1項)を理由に損害賠償請求した。¶001

原判決(福岡高判平成13・7・19判時1785号89頁)は、権限不行使が違法になる時期以降作業に従事した者(の一部)のYに対する請求を一部認容し、民法724条後段(平成29年民法改正後724条2号)が定める期間(以下「長期期間」とする)の起算点について次のように述べる。「不法行為の時」とは、「『不法行為の構成要件が充足されたとき』、すなわち、『加害行為があり、それによる損害が、客観的に(被害者の認識に関係なく)一部でも発生したとき』」であり、「じん肺の病変の特質に照らすと、……各行政上の決定に相当する病状に基づく各損害及びじん肺を原因とする死亡……に基づく損害は、その各決定あるいは死亡の時点において、それぞれの損害が発生したとみるべきであるから、結局、除斥期間の起算点も、最終の行政上の決定を受けた日あるいはじん肺を原因とする死亡の日と解するべきである」。¶002