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事実の概要

金融ブローカーAは、資金繰りに困るX(会社―原告・控訴人・被上告人)に手形を振り出させ、その手形の騙取を企図した。Aは、Xに対し、3000万円分の手形を振り出すことで、Y(銀行―被告・被控訴人・上告人)のB支店で割り引けるなどと述べて、額面200万円の約束手形15通(以下、「本件手形」とする)を振り出させた。またAは、B支店長Cに対し、①本件手形の割引を依頼し、②割引ができないとしても、Aが割引先を探すまで本件手形を預かるよう依頼し、Aが割引先をみつけた際にはXに預金をさせる旨告げた。Aが提案する上記やり方はY銀行の内規や慣行、さらには法令にも反しうるものだったが、Cは預金実績を上げるため、副支店長や本店等に告げずに、②の方法を承諾した。その後、Xの常務取締役や経理課長がCと交渉し、Xは本件手形をCに預け、CはXに預り証を交付した。(以下、この取引を「本件取引」、これに関する事実を「本件取引に関する事実」とする)。その後、Aは本件手形の預り証を偽造し、Cに預けられていた全ての本件手形を騙取し、市場に流通させた。Xは全手形の回収を試みたが、5通を回収できず、手形所持人からの請求を受け、その支払を余儀なくされた。Xは、手形の回収や手形金請求に関する費用等で合計1366万円余りが掛かったとして、その賠償をYに求めた。¶001