FONT SIZE
S
M
L
事実の概要
日本橋にある卸売会社の経営者であるX(原告=反訴被告・被控訴人・被上告人)には、妻と3人の子女とがある。昭和28年、Xは、45歳位のとき、長野県の高等女学校を卒業して上京した22歳位のY(被告=反訴原告・控訴人・上告人)と、Yが勤務する日本橋の理髪店で知り合った。同年9月頃、Xは、Yを誘って情交を結んだ。Xは、その後もYを呼び出して、Yと密会を重ねた。Yは、Xに妻子があることを知っていた。同年10月、Xは、Yに理髪店を辞めさせる一方、将来の不安を取り除くため、近く妻と離婚してYと結婚するつもりであると告げた。昭和29年6月、Xは、Yとの間で不倫の関係を続け、Yに住居と自活の途とを与えるため、このXの意図を察知しているYに対し、建物(以下、「本件建物」という)を贈与し、未登記のまま引き渡した。Xは、本件建物を訪ねてYと情交関係を続けていたものの、昭和30年後半には、Yと不和になった。昭和31年、Xは、Yに対し、所有権に基づいて本件建物の明渡しを求めるとともに、同年11月、訴訟を自己の有利に導くため、本件建物についてX名義の所有権保存登記をした。これに対し、Yは、反訴を提起し、贈与により本件建物の所有権を取得したと主張し、真正の所有者として、所有権移転登記手続を求めた。¶001