事実の概要
X(A県漁業協同組合連合会―原告・被控訴人・被上告人)は、昭和21年2月に、Y(被告・控訴人・上告人)から漁業用タール2000 tを見積価格金49万5000円で買い受けることを約し、その受渡しの方法は、買主たるXが必要の都度その引渡方を申し出て、売主たるYにおいて引渡場所を指定し、Xがその容器であるドラム缶を当該場所に持ち込み、上記タールを受領し、昭和22年1月末日までに全部を引き取ることと定め、Xは契約とともに手付金20万円をYに交付した。上記タールは、Yが訴外B製鉄株式会社から買い受けてこれをXに転売したものであって、B社の製鉄所構内の溜池に貯蔵したものであった。Yは約旨に従い、引渡場所をXに通知し、昭和21年8月までに代金10万7500円に相当するタールの引渡しをしたが、その後になって、Xは、タールの品質が悪いといってしばらくの間引取りに行かず、その間Yは、タールの引渡作業に必要な作業員を配置する等引渡しの準備をしていたが、同年10月頃これを引き揚げ、監視人を置かなかったため、同年冬頃、B会社労働組合員がこれを他に処分してしまい、タールは滅失するに至った。そこで、Xは、昭和24年11月15日に、Yに対し、内容証明郵便をもってYのタール引渡しの不履行を理由に残余部分につき契約を解除する意思表示をし、支払済手付金から引渡しを受けたタールの代価を差し引いた残金9万2500円の返還を請求して、本訴に及んだ。¶001