事実の概要
Y1(被告・控訴人・被上告人)は、昭和32年3月21日までに、A(Y1の妻であったY2〔被告・控訴人・被上告人〕の姉亡Bの夫)から、52万円を同月から昭和40年10月21日まで毎月21日限り5000円ずつ返済するとの約定で借り受け、この債務を担保するため、自己所有の甲土地および本件建物の所有権をAに移転し、所有権移転登記を経由した。しかし、Y1は、X(Y2とBの兄―原告・被控訴人・上告人)が本件建物の占有を始めYらが本件建物から転居した昭和38年5月以降、上記債務に係る返済を怠った。Y1は、Xに対して本件建物について所有権に基づく明渡しを求める前訴を提起し、その認容判決の確定後である昭和53年10月、強制執行により本件建物の明渡しを受け、その後Y2とともに本件建物を占有した。昭和54年8月29日、上記債務の残額は26万2965円であり、甲土地および本件建物の時価は990万円を下らなかったところ、Aは、同日、Xに対して、甲土地および本件建物を贈与し、同月31日、その旨の所有権移転登記を経由した。この贈与契約の締結は、専らXが、Y1において早晩上記債務を弁済して甲土地および本件建物を取り戻すことを予測してこれを封ずるとともにY1においてAから甲土地および本件建物の処分に伴う清算金960万円余を取得することを事実上不可能とすることを意図して行ったものであった。昭和56年8月20日、上記債務の残額は28万6869円を超えなかったところ、Y1は、同日、上記債務の残額に係る支払として38万3013円を供託した。¶001