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事実の概要

貸金業者X(原告・控訴人・上告人)は、昭和7年1月27日に、農夫Y(被告・被控訴人・被上告人)に対して、弁済期を約2か月後とする約定で500円を貸し付け、手数料等87円余を天引きした412円余を交付した。当時、Yは、A保険会社との間で保険金額2000円の生命保険契約を締結しており、保険料計1281円余を払込済みであった。Xは、貸金債権の担保として、この生命保険契約上の権利について質権の設定を受け、Yから保険証券を交付された。その際、両者の間で、次の特約がされた。すなわち、①Yが債務を弁済しない場合には、Xが解約返戻金を受け取り、または名義をXに変更して契約を継続するものとし、②解約返戻金または保険金が貸付金に比して過不足を生じたとしても、YはXに対して不足金を支払わないが、他方で剰余金の支払も請求しない、との特約である(以下、「本件特約」とする)。¶001