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事実の概要

Y(被告・被控訴人・上告人)は、父親から木造2階建店舗(旧建物)の所有権およびその敷地の借地権を相続したが、精神の発達に遅滞があり、6歳程度の知能であったため、主としてYの姉Aが旧建物を管理し、X(原告・控訴人・被上告人)との間の賃貸借契約の締結、その後の賃料改定、契約の更新などの交渉にもAがあたった。これらのことについて誰からも苦情は出なかった。その後、旧建物の敷地および隣接地上に等価交換方式でビルを建築する計画が立てられ、旧建物の取壊しが必要となった。そこで、Xが旧建物からいったん立ち退き、ビル完成後にYが取得する区分所有建物を改めてXに賃貸する旨の合意書が作成され、その後X・Y間で新築後のビルにYが取得することとなる専有部分の建物(本件建物)について賃貸借の予約(本件予約)がなされた。この際、Xとの交渉には主としてAがあたり、合意書および本件予約にもAがYの記名・捺印をしたが、Yのもう一人の姉であるBも本件予約締結時に同席する等していた。本件予約には、Yの都合で賃貸借の本契約が締結できなくなったときは、YがXに4000万円の損害賠償金を支払う旨の合意が含まれていた。しかし、ビル完成前にAがXに対して本契約の締結を拒み、借入金の担保として第三者Cに本件建物を譲渡したので、Xは、この合意に基づき、Yに対して損害賠償金4000万円と遅延損害金の支払を求めた。1審ではXが勝訴し、Yが控訴したが、控訴審係属中に、Yにつき禁治産宣告がなされ、Bが後見人に就職した。控訴審は、Yによる訴状等の送達の受領および訴訟代理権の授与は意思無能力により無効であるとして、1審を取り消して差し戻した。差戻し後の1審では、Yが勝訴したが、原審では、Xが勝訴。原審は、後見人に就職したBが本件予約の追認を拒絶することは信義則に反し許されないとした。Y上告。¶001