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事実の概要

都立高等学校の教諭であったX(原告・控訴人=被控訴人・上告人)は、卒業式における国歌斉唱の際の起立斉唱行為を命ずる校長の職務命令に従わず、国歌斉唱の際に起立しなかった。起立斉唱行為を拒否する理由について、Xは、日本の侵略戦争の歴史を学ぶ在日朝鮮人、在日中国人の生徒に対し、「日の丸」や「君が代」を卒業式に組み入れて強制することは、教師としての良心が許さないという考えを有している旨主張した。都教委は、不起立行為が職務命令に違反し、全体の奉仕者たるにふさわしくない行為であるなどとして、戒告処分をした。その後、Xは、定年退職に先立ち申し込んだ非常勤の嘱託員等の採用選考において、都教委から、上記起立斉唱行為の拒否が職務命令違反等に当たることを理由に不合格とされた。このため、Xは、上記職務命令は憲法19条に違反し、Xを不合格としたことは違法であるなどと主張して、Y(東京都―被告・被控訴人=控訴人・被上告人)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償等を求めた。第一審(東京地判平成21・1・19判時2056号148頁)・第二審(東京高判平成21・10・15判時2063号147頁)ともに、本件職務命令は憲法19条に反しないとした。なお、都教委がXを不合格としたことについて、第一審では裁量権の逸脱濫用が認められたが、第二審では認められなかった。Xが上告した。¶001