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事実の概要

A(1929年生まれ。原告・承継前控訴人)は「エホバの証人」の信者であり、宗教上の信念から、いかなる場合にも輸血を受けることは拒否するという固い意思を有していた。Aは1992年7月、入院したP病院で悪性の肝臓血管腫と診断されたが、同病院の医師が、輸血をしないで手術はできないと告げたため、退院して別の医療機関を探した。「エホバの証人」の医療機関連絡委員会のメンバーが、輸血を伴わない手術をしたことで知られていたB医師の了解を得たので、Aは8月にBの勤務するQ病院に入院した。だがY(国―被告・被控訴人・上告人=附帯被上告人)が設置・運営するQ病院は、外科手術を受ける患者が「エホバの証人」の信者である場合、右信者が輸血を拒否することを尊重し、できる限り輸血をしないことにするが、輸血以外に救命手段がない事態に至ったときは、患者およびその家族の諾否にかかわらず輸血する、という方針を採用していた。¶001