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事実の概要

Y(昭和女子大学―被告・控訴人・被上告人)の学生であったX1(原告・被控訴人・上告人)は、1961年10月頃、数日間にわたって昼休みや放課後を利用して、「政治的暴力行為防止法」反対の国会請願のための署名を集めた。Yは、X1の活動が学生手帳記載の「生活要録」の規定(「学内外をとわず署名運動、投票……などしようとする時は事前に学生課に届出その指示を受けなければならない」)に反しているとして取調べを行った。取調べの過程で、同大学学生X2(原告・被控訴人・上告人)らが、「生活要録」の規定(「学生は補導部の許可なくして学外の団体に加入することができない」)に反して、日本共産党と関係の深い青年組織「民主青年同盟」に加入していることも判明した。Yは、「生活要録」違反を理由に、X1・X2両名に対し「補導」を行ったうえで同年11月8日、自宅謹慎を命じた。両名はこの処分に反発し、X2が翌年1月発売の女性週刊誌に手記を寄せたほか、同月に開催された討論集会や翌2月に放送されたラジオ番組において、Y側の対応を批判する発言を行った。Yは、両名の一連の行動が学則の退学事由(「学校の秩序を乱し、その他学生としての本分に反したもの」)に該当するとして、2月12日付けで退学処分とした。X1・X2は、学生たる地位の確認の訴えを提起。第一審判決(東京地判昭和38・11・20行集14巻11号2039頁)は、「公の性質」を有する私立大学においては、憲法の保障する思想の自由は尊重されなければならず、私立大学は「学生の思想に対して寛容であることが法律上要求されている」こと、退学処分については「教育機関にふさわしい方法と手続により本人に反省を促す過程を経る」法的義務があることを理由として、X1・X2の請求を認容した。控訴審判決(東京高判昭和42・4・10行集18巻4号389頁)は、本件退学処分が「社会観念上著しく不当であり、裁量権の範囲を超えるものとは解しがた」いとして、原判決を取り消した。X1・X2が上告。¶001