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事実の概要

本件は、陸上自衛隊に勤務していた被告人が、業務上保管していたパソコン1台を自宅に持ち帰り、横領したという業務上横領の事案である。被告人は、捜査段階において私選弁護人を選任し、即決裁判手続による審判に書面で同意し、有罪陳述をして懲役1年・執行猶予3年の有罪判決を言い渡された(千葉地木更津支判平成20・3・12刑集63巻6号〔参〕636頁)。しかしその後、一審弁護人とは別の私選弁護人が選任され、被告人側が控訴し、被告人には業務上横領の故意がなく無罪であるとして事実誤認を主張するとともに、即決裁判手続による判決に対して事実誤認を理由とする控訴の申立てを制限する刑訴法403条の2第1項は裁判を受ける権利を侵害するものであって憲法32条に違反し、また即決裁判手続は、執行猶予の言渡しが必要的であるために安易な虚偽の自白を誘発しやすく憲法38条2項にも違反すると主張した。東京高判平成20・7・10(判タ1292号315頁)は、被告人および一審弁護人が即決裁判手続による審判に同意し、有罪陳述をしていること、業務上横領の故意を争っていないことなどを指摘し、即決裁判手続によって審判し判決に至った点に違法はないと判示し、憲法32条、憲法38条2項違反の主張も斥け、控訴を棄却した。これに対し、被告人側は上告し、控訴審と同様の憲法32条、憲法38条2項違反等の主張を行った。¶001