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事実の概要

昭和52年X(原告・控訴人・上告人)は、Y保険会社(被告・被控訴人・被上告人)との間で、Xを保険契約者兼被保険者、保険金額800万円、Xの妻であったAを保険金受取人とする生命保険契約(以下、本契約という)を締結した。本契約約款20条1項において、保険契約者は、契約者貸付として、解約返戻金の90%の範囲内でY会社から貸付を受けることができ、保険金または解約返戻金の支払の際に貸付金の元利金が相殺され支払われる旨の定めがあった。昭和61年Aは、Y会社の支社に赴き、Xの代理人として、契約者貸付制度に基づき27万円余を借り入れ、その大部分を生活費等に費消した。その際Xが記載して作成したX名義の委任状、本契約の保険証券および本契約申込書に押捺されたXの印鑑と同一の印鑑およびこれに類似する印鑑を持参していた。Y会社の担当者は、Aの持参した健康保険証によりAがXの妻であることを確認し、委任状のXの署名の筆跡等および印影がいずれも一致したこと、ならびに本件貸付金の振込先の銀行口座がX名義の口座であることをそれぞれ確認した上で、AにXの代理権があると信じて、本件貸付を行った。平成4年本件保険の満期が到来したことから、Y会社は、Xに対し、満期保険金等満期に支払うべき金額から上記貸付金の元利合計を控除した額をもって満期保険金とする旨の通知を発したところ、XはAの借入れ行為は、無権代理によるもので無効であると主張し、Y会社に対し、本件借入れについて債務不存在確認訴訟を提起した。¶001