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事実の概要

(1)

本件は、少年が、平成6年1月、路上駐車中の車内から現金4万円余りなど在中の手提げバッグ1個(時価合計約25万円相当)を窃取したという窃盗保護事件の保護処分決定に対する抗告事件である。原審の大阪家庭裁判所は、少年が同様の車上窃盗を2回にわたり試みたが失敗した旨自供していること、その犯行の動機が、徒遊生活を続けたため、稼働している同棲女性の手前、生活費の捻出に苦慮していたところ、たまたま車上荒らしの手口を思いついたものであることを認定し、本件そのものは偶発的な犯行であると一応認められるとしたが、少年には、その動機と結びつく徒遊生活のほか、非行その他の要保護性に関する種々の事情が認められるとして、①少年のこれまでの生活状況、特に年長不良者と結びついて素行が乱れ、不良集団の中心的存在となって傷害、恐喝などの非行を反復するなどし、教護院(現在の児童自立支援施設に相当する)や初等少年院(現在の第1種少年院に相当する)(一般短期処遇)へ送致されたこと、②少年院を仮退院した後も恐喝、傷害などの非行を繰り返し、右翼団体や暴力団へ加入し、計50回前後にわたり覚醒剤の自己使用を続けたこと、③少年と覚醒剤との関わりは単なる自己使用の域にとどまらず、その密売にまで至っていたと推認されることなどを認定した。そして、少年の非行の程度、経歴、生活状況、その背景をなす性格上の問題点、従来の保護処分歴その他その要保護性の高さを総合考慮し、少年を特別少年院(現在の第2種少年院に相当する)に送致する旨の決定をした。¶001