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事実の概要

本件は、昭和27年5月1日、東京都明治神宮外苑でのメーデー中央集会を終えたデモ隊が、会場としての使用が認められなかった皇居前広場に立ち入り、同広場およびその周辺において警官隊と衝突し、多数の負傷者のほか死者も出すに至った騒乱事件である。事件発生から17年8か月余りを経て、第一審(東京地裁)において、203人の被告人に対する判決が宣告された。¶001

〈判旨〉の被告人(以下、単に「被告人」という)は、家裁において検察官送致となって起訴されたところ、第一審判決(原判決)は、被告人について、騒乱に加わっている多衆に加担する意思をもって、路上の石を拾い、警官隊の方へこれを投げつけ、もって騒乱に際して率先助勢したものであると認定した。控訴審において、弁護人は、原判決の事実認定の証拠は、被告人の検察官に対する供述調書および少年調査官補に対する供述調書の各自白、ならびに原審証人Aの証言のみであるところ、同自白は強制、利益誘導によるもので証拠とすることができないものであるなどとして、原判決には訴訟手続の法令違反があるとの主張をした。¶002