事実の概要
本件は、家庭裁判所が、先に少年法(以下、少年法の表記は省略する)17条1項2号の観護の措置(少年を少年鑑別所に送致するもので「収容観護」と呼ばれている。以下、「観護措置」という語はこれを指すものとして用いる)をとって審判した事件の差戻しを受けた場合に、改めて観護措置(再度の観護措置)をとることができるかどうかが問題となった事案である。¶001
少年は、2件の窃盗事件について観護措置をとられた上で審判を受け、試験観察(25条)に付されていたが、この試験観察中に2件の強制わいせつ未遂事件に及び、これらが順次家庭裁判所に送致され、それぞれについて観護措置がとられた(このような追送致事件の観護措置に関する問題については本書17事件で取り上げられている)。家庭裁判所は、これら4件の事件を併合して審判し、少年を少年院に送致した(この決定までに少年が観護措置により収容されていた期間は、窃盗事件につき21日間、各強制わいせつ未遂事件につき計38日間であった)。これに抗告がされ、高等裁判所は、この決定を取り消し、事件を家庭裁判所に差し戻した。これを受けた家庭裁判所は、平成5年4月28日に観護措置(以下「本件観護措置」という)をとり、同年5月11日に少年を少年院に送致した(原々決定)。この決定にも抗告がされ、付添人は、本件観護措置が違法な身柄拘束である等の主張をしたが、高等裁判所は、抗告を棄却し(原決定)、再抗告が申し立てられた。¶002