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事実の概要

被告である石油元売業者らは、第1次石油危機の際に灯油の値上げ協定をした。これにより高値で灯油を購入させられたと主張する原告ら(事件①では東京・神奈川の消費者、事件②では鶴岡〔山形〕の消費者)が、被告らに対し、事件①では独禁法25条に基づき、事件②では民法709条に基づき、損害賠償を請求する訴えを提起した。¶001

事件①の第1審である高裁判決(東京高判昭和56・7・17判時1005号32頁)は、協定当時他に値上がりの要因があったから、小売段階における想定購入価格が現実の小売価格を下回ったか否か不明だとして、原告らの請求を棄却した。他方、事件②の控訴審判決(仙台高秋田支判昭和60・3・26判時1147号19頁。以下「原審」)は、価格協定の締結がない場合でも具体的な値上げ時期および値上げ幅の割合をもって価格の上昇が確実に予測されるような特段の事情のない限り、価格協定直前の小売価格(直前価格)をもって想定購入価格と解するのが相当であるとした上で、損害額の立証ありとして原告らの請求を認容した。¶002