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刑訴法319条2項は、憲法38条3項をうけて、「被告人は、……その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない」として、自白には補強証拠が要求される旨を定めている。本決定は、被告人自身が作成した、自白に係る事実の記載を含む書面が、補強証拠としての適格を有することを認めたものである。
被告人は、第1審において旧食糧管理法違反(いわゆる闇米の買受けおよび売渡し)の罪で有罪とされた(神戸地判昭和28・12・28刑集〔参〕11巻12号3050頁)。このうちの闇米の売渡しの事実に関する証拠として、被告人からの買受人63名中16名については、その買受けに係る供述調書があったものの、残りの47名については、被告人の公判廷および公判廷外での自白のほかは、被告人が、犯行当時、販売の月日、数量、金額、相手方等を記入していた未収金控帳があるにとどまった。そこで、弁護人は、上告趣意において、闇米の販売は統制法規上自己に不利益な事実であって、備忘のためそれを記入することは自白ないし自認にあたるから、本件未収金控帳は、被告人の自白に対する補強証拠とはなり得ないと主張した。これに対し、最高裁は、次のように述べて、これを退けた。
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