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事実の概要

(1)

被告人は、①大学の実験室から薬品類を盗んだ、②爆発物を派出所に仕掛けて爆発させ、派出所等を損壊し、近くに居合わせた人に傷害を負わせた(「派出所爆破事件」ともいう)、③交際中の女性と懇意になった男性に暴行を加えて傷害を負わせた、④アパートの室内で鉄パイプ爆弾2個を製造し、大学構内等で隠匿所持した、という4つの公訴事実により起訴された。¶001

被告人は公判廷で全ての事実につき認める旨供述したが、弁護人は、検察官請求証拠の一部を不同意とし、全事実につき被告人の自白調書の任意性を争った。第1審裁判所は、判決に先立ち、③の事実に関する自白調書には任意性を認めて採用したが、その余の事実(①、②、④)に関する自白調書については全て任意性を欠く疑いがあるとして請求を却下した。そして、判決では、①ないし③の事実につき有罪を認定したが、④の事実については、適法に証拠調べした書証9点につき任意性を欠く疑いのある被告人の自白に直接由来するものでいずれも証拠能力を欠く旨判示し、被告人の公判廷における自白に補強証拠が存在しないとして無罪を言い渡した(大阪地判昭和51・4・17判時834号111頁)。¶002