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事実の概要

本件は、殺人事件、傷害致死事件等のほか複数の傷害事件について、被告人に無期懲役が言い渡された事案であり、本決定は、そのうち2件の傷害事件に係る訴因の特定について、最高裁が職権判断を示したものである。¶001

その2件の傷害事件についての公訴事実(第1審における訴因変更後のもの)は、「被告人は、かねて知人のA(当時32年)を威迫して自己の指示に従わせた上、同人に対し支給された失業保険金も自ら管理・費消するなどしていたものであるが、同人に対し、(1)平成14年1月頃から同年2月上旬頃までの間、大阪府阪南市(中略)の○荘○号室の当時のA方等において、多数回にわたり、その両手を点火している石油ストーブの上に押し付けるなどの暴行を加え、よって、同人に全治不詳の右手皮膚剝離、左手創部感染の傷害を負わせ、(2)甲と共謀の上、平成14年1月頃から同年4月上旬頃までの間、上記A方等において、多数回にわたり、その下半身を金属製バットで殴打するなどの暴行を加え、よって、同人に全治不詳の左臀部挫創、左大転子部挫創の傷害を負わせたものである」(以下「A事件」という)および「被告人は、乙、丙及び丁と共謀の上、かねてB(当時45年)に自己の自動車の運転等をさせていたものであるが、平成18年9月中旬頃から同年10月18日頃までの間、大阪市西成区(中略)付近路上と堺市堺区(中略)付近路上の間を走行中の普通乗用自動車内、同所に駐車中の普通乗用自動車内及びその付近の路上等において、同人に対し、頭部や左耳を手拳やスプレー缶で殴打し、下半身に燃料をかけ、ライターで点火して燃上させ、頭部を足蹴にし、顔面をプラスチック製の角材で殴打するなどの暴行を多数回にわたり繰り返し、よって、同人に入院加療約4か月間を要する左耳挫・裂創、頭部打撲・裂創、三叉神経痛、臀部から両下肢熱傷、両膝部瘢痕拘縮等の傷害を負わせたものである」(以下「B事件」という)というものであった。¶002